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〜科学と持論の両輪の重要性〜

東京五輪女子自転車競技・女子ロードレースでアップセットが起こりました。
スイス連邦工科大学ローザンヌ校の数学の研究員でもあるアンナ・ケーゼンホファー(オーストリア)という選手が、金メダルを獲得したのですが、そのバックグラウンドやスポーツに対する持論が非常に刺激的でしたので、トピックに選びました。

アンナ・ケーゼンホファー選手は、アスリートとしての側面以外にも、偏微分方程式論の研究者としての道を歩んでおり、大会前も論文を発表していたそうです。またプロ契約ではなく、アマチュア選手であり、自前の機材で誰も予想すらしなかった大番狂わせをやってのけたのです。5か国語を操り、数学者としても名の知れた類まれな才女がオーストリアに史上二つ目の金メダルをもたらしたとのことです。

▼以下インタビュー引用

「タイム差のボードとか出ていたけど、全く信用していなかったの。私も若いころ選手として、あれをやった方がいい、これをやった方がいい、と言われてそれを鵜吞みにしてやってきたわ。でもね、30歳という年齢になり賢くなったのよ。”わかっている”という人間は実際には何もわかってないものなのよ。逆にわかっている人は”わからない”ときちんと言うものなのよ。そして近道なんてないのよ。そして奇跡もない、それが私が皆に言える教訓よ。決して人を信じるなということではなく、誰の言っていることが正しいかを見極める目を持つということなの。私の場合それが家族であり、親友だった。そして最後に信じるのは自分、だから私は栄養管理からトレーニング、戦略、機材管理まで全てを自分で行っているのね。私はただペダルを踏んでいるだけじゃないの。常に何ができるかという戦略を刻一刻と変化する時間の中で計算し続けているの。そしてそれが私の誇りよ。」

彼女のインタビューからはスポーツにおける“審美眼”や“信念”のようなものを強く感じ取ることができます。この見極める力を養うために、疑うプロセスが重要になってくるとのこと。プラグラマティズムの創始者であるチャールズ・S・パースの思考の働きの以下のように説明しています。

「思考のはたらきは、疑念(doubt)という刺激によって生じ、信念(belief)が得られたときに停止する。したがって信念をかためることが思考の唯一の機能である」

また疑念から信念へ到達する試みを「探究」(inquiry)と名付けています。

インタビューの中に“30歳という年齢になり賢くなったのよ”という文言があります。最新のデータやテクノロジーを活用しつつも、個々が感じる“違和感”を放置することなく探究することが大切にように思えます。これはトップアスリートだけではなく、私のような一般人にとっても同じだと考えています。

▼参考文献
CYCLINGTIME.com
東京五輪女子ロードレース:まさかの大金星!スタートから飛び出し逃げたアマチュアのアンナ・ケーゼンホファーがそのままゴールまで逃げ切り勝利!数学の博士号持つ才女がロード最強に!(2021年)

東京五輪女子ロードレース:まさかの大金星!スタートから飛び出し逃げたアマチュアのアンナ・ケーゼンホファーがそのままゴールまで逃げ切り勝利!数学の博士号持つ才女がロード最強に!

『パースのプラグマティズム』(伊藤 邦武, 勁草書房, 2003年)
『プラグマティズムの思想』(魚津 郁夫, ちくま学芸文庫, 2006年)

足立 潤哉

足立 潤哉

人材育成を生業としている30代後半の管理人が、純粋に“善い”と感じたものを残していくためのブログです。 活動拠点:茨城県つくば市

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