創造社会(Creative Society)

学び・考え方

時代の変化を捉える

人材育成を行うにあたっては、時代の変化を大まかに捉えておく必要があります。この「今」のとらえ方には、様々なアプローチがありますが、慶應義塾大学総合政策学部教授の井庭崇氏は、ここ100年の変化を「Consumption(消費社会)」→「Communication(情報社会)」→「Creation(創造社会)」という3つの「C」で表しています。

時代の変遷

1. Consumption:消費社会
「消費社会」はアメリカでは1920年代から、そして日本では戦後の1950年代から始まったといわれています。モノやサービスを消費することに人々の中心的な関心が置かれ、どれだけ消費できているかが、生活・人生の「豊かさ」を象徴した時代です。テレビや冷蔵庫、車といったものを所有することや、休みの日に旅行に出かけるといったことが、人々の関心事でありました。
2. Communication:情報社会
消費社会のあとには、コミュニケーションの時代が到来しました。1990年代半ば以降、インターネットや携帯電話の普及によって急速に広がったのが、狭義での「情報社会」となります。これまで、人々の関心がモノやサービスを消費することにあったところから、コミュニケーションやその基盤となる人間関係へと移行しました。これは、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などのオンライン上のやりとりだけを意味するのではなく、カフェでのおしゃべりといった、現実世界での交流も含まれます。つまり、どれだけ良いコミュニケーションや関係性を築くかということが「豊かさ」の象徴になったともいえます。
3. Creation:創造社会
そして井庭氏は、いま始まりつつあり、これから本格化していく社会を「創造社会(Creative Society)」と呼んでいます。
創造社会は、創造やつくるということが人々の関心や生活における中心となる時代を意味します。人々は、自分(たち)がつくりたいと思うものを、自分(たち)でつくることができるようになり、どれだけ自分がつくりたいものをつくれているかということが、生活や人生における「豊かさ」を象徴すると考えているのです。そのうえで、つくりたいものを自分でつくることができる時代、パーソナルなものづくりの時代として、「ものづくりの民主化」に入ったと井庭氏は表現しています。

働き方やキャリアとのつながり

この創造社会においては、「つくる」のはものだけではなく、仕組みやコミュニティといったものまでも含まれています。例えば、自分らしい働き方や生き方をつくること、自分たちの組織のルールを既成概念にとらわれずにつくっていくこと、そういった非物質的なものをつくることも行われるようになっていきます。そういった多様な考えやスタイルに対し、画一的な制度やルールの窮屈さが障害となったり、持続性が確保できなかったりすることから、個々の状況に合わせた柔軟な設計の必要性・重要性が認識され始めているというわけです。
このように、時代の変遷は社会の変化を生み、それらが共に、若手の価値観や職業観に大きな影響を与えています。この創造社会をベースに考えれば、働く意味や、企業との関係も含めたキャリアは今後、個人がつくっていくという流れが加速していきます。

自分のモノサシをつくる

自由度が高まるということは責任やリスクも伴うものです。キャリア形成の中で決断をくだす時に“自分のモノサシ”が必要となります。審美眼のように判断軸とするものは何か?この辺りをいかにシンプルに淀みなく形成していけるかを個人的には大切にしていきたいと考えています。そして、この“自分のモノサシ”を持って変化の激しい社会に判断や決断を下させる人材を育成することが、今開発中の「軸プログラム」となります。無理に思考に頼ることなく、無理に言語化するわけでもなく肚で決める。こんなイメージで制作を続けています。


▼参考文献
『クリエイティブ・ラーニング-創造社会の学びと教育-』(井庭崇[編著], 鈴木寛, 岩瀬直樹, 今井むつみ, 市川力, 慶應義塾大学出版会, 2019年)

足立 潤哉

足立 潤哉

人材育成を生業としている30代後半の管理人が、純粋に“善い”と感じたものを残していくためのブログです。 活動拠点:茨城県つくば市

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