“正しさ”や“リアリティ”について

研修・人材育成関連

二つの正しさ

為末大さんのコラムで「二つの正しさ」というタイトルというものがあり、私もよく考えることがあるので内容を拝借しながらまとめてみたいと思います。。
二つの正しさの中身を倫理的正しさと実利的正しさに層別してあり、前者が「そうあるべき」で語られ、後者の実利的正しさは「具体的に自分はどうすべきか」で語られると説明しました。
そして、この二つをビジネスの世界に混同させてしまうと仕事はうまく立ち行かなくなり、その理由としては仕事は常に倫理と実利が対立し矛盾しているものだからとのこと。世間のためと言いながら自己の利益も追求し、全ての人をと言いながら顧客とそうではない人を分けています。倫理的正しさばかりを主張すると仕事になりません。その通りだと思います。

二つのリアリティ

私も研修で似たような概念をリアリティという言葉を使って話すことがあります。一つは“主観的な感覚としてのリアリティ”で、もう一つは“人間の感覚とは無関係に存在する客観的なリアリティ”です。
歴史の中では、ときには客観的主義が優勢になり、ときには主観主義が優勢になるという大きな振れ幅の中で、最終的には、リアリティというのがそのどちらに還元されない相補的な二面性が分かってきてきていると言われています。為末さんのコラムを拝読した時に、これまでは二項対立で捉えられていた物事が双方を両立させる二項動態として捉えるべきであるという風潮が間違いなくあると思いました
SECI理論モデルを提唱された経営学者の野中郁次郎氏は二項動態の必要性を現在の経営には不可欠とおっしゃっております。経営は現状の二者択一から二者両立を目指す方がむしろ自然だと思います。「暗黙知と形式知」、「感性と知性」、「アナログとデジタル」、「安定と変化」は相互補完の関係にあります。対立しながらも一つの事象を共存させる。つまり、どちらか一方ということではなく、あれもこれもを両立させて「二項動態」と捉えていくことにシフトした方が物事を正確に把握しやすくなるのではないでしょうか。

「Win-Lose」のビジネスモデルから「利他共生」へ

エグゼクティブ向けのリーダーシップ研修のサポートなどに入った時には、「利他共生」のような経営観に対するダイアログが必ずと言い切れるほど含まれています。
利他共生とは、「他者に生かされ、他者を生かし、共に生きる」ことです。
タイトルにある「Win-Lose」のビジネスモデルは大手企業で働いていた時には全く感じなかったことでしたが、10名にも満たない企業を数社経験する中で、このスタイルの企業がまだまだ残ってあり、搾取によって特定の人の富や地位が形成されていることを目の当たりにしました。そして、それは既得権益のようなものなので、意図的に破棄して新しいスタイルを共創するリーダーがいかに貴重であるかも同時に痛感しました。
話を戻しますと、利他共生型のビジネスは二つの正しさの中で倫理的側面の話だと置き換えることができます。今フリーランスになって世の中には実利と倫理の間のど真ん中で勝負している同世代や若い世代、さらには年上の方々が山ほどいることも事実として存在してあることにも同時に気付かされました。

皆さんの組織やトップ、またご自身はどのような経営観で仕事に取り組んでいますか?サイレントピリオドのような、うんともすんとも変化が起こらない時期が必ず待ち構えて、多くの人が道半ばで諦めてしまっているように思えます。長い道のりにはなりますが、今できることを地道に全力で取り組んでいいくこと、そして“べき論”に蓋をせずに、実利と倫理を振り子のように行ったりきたりしながら、仲間と共に仕事をすることが大きな喜びになるのではないでしょうか。少なくとも今はそのように思います。

足立 潤哉

足立 潤哉

人材育成を生業としている30代後半の管理人が、純粋に“善い”と感じたものを残していくためのブログです。 活動拠点:茨城県つくば市

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