「謙虚なコンサルティング」を読み終えて

学び・考え方

「業績悪化に伴い来年度は研修を全てキャンセルさせてください…」
“コンサルティング”“人材育成“または“組織開発”を生業としている多く人が一度は味わう、仕事に対する虚しさを感じる瞬間ではないでしょうか?状況が思わしくない時にこそ必要なサービスであるはずなのですが、実態はそうではないと私は痛感しています。

謙虚なコンサルティングはこの矛盾に対して多くのヒントを示唆してくれました。
著者であるエドガー・H・シャインは「本当の支援」を下記のように定義しています。

本当の支援とは…

① 問題となっている状況の本当の複雑さと厄介さを理解し、
② その場しのぎの対応や反射的な行動をやめ
③ 適切なアダプティブ・ムーブを展開し、本当の現実に対処すること

コンサルタントとして役に立っているかの評価はクライアントと私(コンサルタント)の双方が絶え間なく実施することを前提としています。つまり外部からの一時的な関与に対して、クライアントが短絡的に評価する支援スタイルと本当の支援との間には大きな溝があることを伝えています。
のアダプティブ・ムーブとは問題や課題の複雑さと厄介さのみならず、コンサルタントとクライアントの性格や、両者の関係性を築く際の自分を偽らない高潔さのようなものも加味されているために、コンサルタントの鞄に入っているもう一つの「ツール」ではないと強調しています。この内容からもクライアントに適合する(adapt)ためには互いにを信頼し、率直に話をできる関係性の他に、実際に解決まで導ける知識や共感力、グリット(やり切る力)などの能力が複合的に必要となるのではないと考えます。

■クライアントに対する姿勢(3C)

Commitment:力になりたいという積極的な気持ち
Caring:クライアントに対する思いやり
Curiosity:好奇心

果たしてどれだけ私自身の仕事がこの3Cに基づいているのかを、今一度考え直す必要があると思います。数値的目標を達成すべき時こそ、サービスがクライアントに対する姿勢(3C)に紐づいている必要があると切に感じています。

■適切な関係性

レベル2:固有としての存在として認知する
著者が定義する人間関係とは下記の通りです。

「過去の付き合いに基づいた、互いの未来の行動についての、一連の相互期待のことである。」

役割に基づく関係(レベル1)や深い友情、愛情、親密さの伴う関係(レベル3)は謙虚なコンサルティングの領域ではありません。適切な関係が成立するためには、互いの期待に対称性がなければなりません。この対称性は、関係がどれほど深くなれるかをいわば試すものとして一連のやり取りが機能する場合、そのやりとりを通して、時間をかけてつくられていくと書かれています。つまり、適切な関係性は一朝一夕で出来上がるのではなく、苦楽を共にしてこそつくられるものではないかと推測します。

まとめ

クライアントにとって「本当の支援」とは?この問いに対して真摯に向き合う必要があると常々考えています。相手を深く知るまでの時間を省略してはいけないですね。
今の仕事のプロセスを見直す時期にきていると思います。研修というソリューションでは届かない課題に対して、真摯に向き合うためには、やはり時間が必要です。自分自身の理想の働き方は外の人間としての立ち位置ではなく、組織の一部として参画するスタイルであると強く思う今日この頃です。


▼参考文献
『謙虚なコンサルティング』(エドガー・H・シャイン, 金井 嘉宏 監訳, 野津 智子 訳, 英治出版, 2017年)

足立 潤哉

足立 潤哉

人材育成を生業としている30代後半の管理人が、純粋に“善い”と感じたものを残していくためのブログです。 活動拠点:茨城県つくば市

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