イチローさんと高校生

研修・人材育成関連

野球界のレジェンドのイチローさんが、千葉明徳高と國學院久我山高(東京)の野球部員に直接指導している内容が興味深かったので残しておきます。

練習中の「声」について

“文武両道”で知られる國學院久我山の選手には「声を張っていきたいな」や「小さい(ちっちゃい)な声が!!」などと、練習中にしきりに声を出すことの重要性を諭しているように見えました。イチロー選手も送球練習では大声を出し練習に加わっていたのも、自分でその姿をちゃんと見せるんだなーと感心していました。一方で千葉明徳高校の時には「無駄な声が多いですね」と監督さんに助言していたシーンがありました。とても印象的です。両チームの画面越しでの特徴としては國學院久我山高は「考えて野球することができ、合理的に課題を改善できるチーム」で、千葉明徳高は「和気藹々とした雰囲気でハードワークをこなしながら、強くなっていくチーム」のように映ったのですが、注目すべき点はこの両校に対して、全く違うアドバイスをしているということです。

相反するアドバイスの裏側について

この一つの実例から帰納的にベストプラクティスを考えてみることにします。同じ高校生、どちらも甲子園を目指して練習に励む強豪校の選手でも全く逆のアドバイスが存在しています。個人、チームによって情報や経験の認識が変わることは、ジャン・ピアジェの「発生的認識論」で説明がつくと思いました。端的にお伝えしますと、人間は認識の枠組みとしての「構造」をそれぞれもっていて、経験していることや人の意味を各々の“フィルター”を通じて「調整」して、そして、自分の構造に「同化」させていきます。(詳しくは今後まとめます!)両校の構造的には重要視していないポイントをイチローさんは指摘しているように見えます。久我山高には強さの秘訣である「合理性」に対して、千葉明徳に関しては「エネルギッシュさ」に対して、一旦疑うことができるような問いを投げかけているということです。ある文脈の正解が、そこを外れると逆になることをスポーツ(遊び)を通じて体感できる大切な時間になると思いました。ベストプラクティス自体が存在せず、それぞれのチームの構造に合った“ベスト”を探す必要性も示唆できると考えています。

誰が誰に対して言っているのか

うまくいった成功の秘訣はとても大切です。それにより困難に直面にしても前に進むことができてきたと思います。更には、今後もそのナレッジで漸進的に成長するのではないかと考えます。私が思う難しさは、成功の秘訣が足枷に変わる時、もしくはそのように感じてしまう時です。これまでのやり方や考え方では、課題を解決できない時に、「貫き通すこと」と「手放すこと」のどちらを選ぶか迷うと思います。そのような局面では方法論的なアプローチではなく、尊敬できる人や信頼できる仲間のアドバイスがとても意味を成すと考えるようになってきました。イチローさんの指導を見て、言葉と行動の深さと、発言者のその場に対する責任感のようなものを感じました。

足立 潤哉

足立 潤哉

人材育成を生業としている30代後半の管理人が、純粋に“善い”と感じたものを残していくためのブログです。 活動拠点:茨城県つくば市

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